長城

January 12, 2009

文明のかろうじて及ぶ最果ての地、ハドリアヌスの長城 Hadrian's Wall

Hadrian's Wall 412月23日、Yorkを出て、A1を北に向かう。ここに来ると国道:M1はA1に変わり、片道3車線が2車線になっています。なだらかな起伏の丘陵地帯が遙かに続き、日は既に昇っているはずなのに空は地平線まで、一面の雲に覆われています。高速道路の両側の景色はLondonからYorkとほとんど変わらず、どこまでも続く緑の牧草地、所有地を区分するためであろうが、スレート石を積み上げた石垣で囲まれており、なかに点々と羊が見えます。不思議なことに、農耕地は全く見あたらず、人家の周辺を除いて森や林も見あたりません。ただ、延々と羊の放牧地が続くのです。一面の灰色の空、石垣、石造りの民家、全くモノクロ写真世界です。そこに牧草の暗緑色を後からかぶせたような景色です。

3時間は走ったでしょうか、既に幹線道路をはずれ、簡易舗装となり道幅も狭く、頂きから前方をみてもその底が見えないような起伏の激しいジェットコースターのような道路がB6318と標識のある道路にぶつかります。これが目指す「ハドリアヌスの長城 Hadrian's Wall」に沿って造られた、古代ローマ人の道路とは後日知りました。

ハドリアヌス帝 ローマ帝国ハドリアヌス帝(117年 - 138年)は、それまでの版図拡大政策を断念、帝国防衛体制の確立・内政の整備へとその政策を大きく変換します。

日本では、存在自体も疑わしい、卑弥呼(175年頃? - 248年頃)が生まれるちょっと前、122年、彼はこの地に帝国最北の防衛線建設を命令します。これが「ハドリアヌスの長城 Hadrian's Wall」 です。

ライン河、ドナウ河と並んでこの長城はローマ帝国の防衛線の環(リム Rim)をなすもので、その以西(以南)を帝国絶対防衛圏と定めたものでした。因みに、Rhein(ライン河)及び英語のRim(車輪のリム、へり、周縁)の語源はこれのようです。

Hadrian's Wall 23灰色の雲に覆われた空、吹きっさらしの暗緑色の大地。ローマ帝国最北の防衛線、まさに辺境、文明のかろうじて及ぶ最果ての地。古代ローマのに思いを馳せるべく舞台は整っているのですが、どうもその北風の寒さに負けて十分には感情移入することが出来なかったようで、用意していたタイツ、手袋をホテルに忘れてきた事が悔やまれます。訪れたHousestead Roman Fort(ハウステッド、ローマ人の砦)は確か2〜3月は閉鎖のようで、この期間にはさらに厳しくなるのでしょう。

Hadrian's Wall 6この長城を建設した人たち、駐屯していた兵士は遠くローマからやってきたのか…と思いきや、技術者や兵士はドーバー海峡を越えたオランダ、ベルギー地方の、その当時既にローマ市民であった人たちがその任務に就いたようです。長城建設を命じたハドリアヌス本人も、ローマてはなく、属州の一つ、ヒスパニア(スペイン)出身なのですから、如何に帝国全土に渡ってローマ法での統治がなされていたか、ということでしょう。

5世紀に入ると、(西)ローマ帝国の防衛線の環(リム)はライン・ドナウ河でゲルマン人侵入を許すようになります。ここに至っては、西ローマ帝国政府にはもはや遠いブリタニアを維持する力はなく、AD 407年コンスタンティウス3世はブリタニアを放棄、残存ローマ軍を率いて撤退します。この政治的・軍事的空白、間隙を衝いてアングロ人・サクソン人(ゲルマン人の一派)がブリタニアに大挙侵入、その後「アングロ人の土地、England」が始まります。

時代は大英帝国終焉間近、時の首相:チャーチル曰く、「イギリスが過去、ローマ帝国に蹂躙され、影響されたことは、むしろ幸運なことだった。イギリスの歴史はそこから始まった。」 この言葉は、チャーチルだけではなく、ヨーロッパ全ての国の共通認識ではないでしょうか。…でなければ、誰がEU(欧州連合)の構想を持つことが出来たでしょうか。これこそがローマ文明の<<普遍性>>なのでしょう。

吹きっさらしの丘を下り、幹線道路近くの村の小さなレストラン(兼ホテル)で遅い昼食。暇そうな女主人が、「ミートパイがお奨め」の由で、早速それを注文します。あまり美味しいとは言えませんが、彼女曰く「イギリス料理ではなくアメリカ料理。中にコーンビーフが入っているの」。そういえば建物はイギリスの田舎風、内装はチープな張りぼて、食べたミートパイもそれにぴったりでした。相変わらず外は灰色の雲に覆われた空、日の暮れないうちにYorkへの帰路を急ぐことにしましょう。
* Image: Extent of Roman Empire at the time of Emperor Hadrian AD 117

discount couponHong Kong Express では
【期間限定 お年玉・クーポンプレゼント中!】
【お肌にたっぷり水分補給・保湿!Alpure うれしい価格で登場!】

Profile

ISAO

映画・音楽・歴史、そして、自己流ながら、水彩画を描いています。思いついたことを、気の向いたままに、イサオなりに、深く掘り下げていきます。 ※お気づきの点、改善すべき点をどうぞお聞かせ下さい。

Back Issues At A Glance
Comments
ISAO's Bookshelf
人気ブログ ランキング
NINJA
Search