文明

August 09, 2009

「せんとくん」と阿修羅像

「あの文明発祥の地の今日は…」と、眼を日本国内に転じると平城京、奈良に突き当たってしまいます。どうも、「文明」という言葉はそぐわないのですが…。

「一国の文化はその首都に集約される」そうですが、まさに当時の日本文化は平城京に集約されていたのでしょう。

しかし、今日の奈良は、関西育ちの私にとっては、小中学校時代、退屈な遠足の目的地に過ぎませんでした。日本歴史の宝庫、それに関連する観光名所ではあっても、失礼ながら、今日の奈良から外部に向けて発信・放射され、外部からも普遍的と評価される「奈良独自の価値=文化」は1300年前の「平城京の天平文化」に尽きるのではないでしょうか。

平安京、京都が明治維新まで約1千年、日本の首都であったことに比べると平城京が首都であったのが短すぎる故か、今日でも使われる「くだらないものですが」と、京都に対する「あこがれの念」は、残念ながら、奈良に対しては持ち合わせていないように思えます。少なくとも庶民の「あこがれの念」という意味においては…。天平文化は平安京に継承されてしまい、その地でさらなる発展を遂げるの仏教寺院だけで、いや、「仏教こそ」が普遍的価値であったということなのでしょう。
せんとくん
関西ではおなじみ(?)の「せんとくん」,来年、2010年、「平城遷都1300年祭」のマスコット・キャラクターだそうです。有名な彫刻家によるデザインらしいのですが、あまり評判がよろしくないようです。

一方、先日の東京国立博物館での阿修羅像〔天平6年(734)興福寺蔵〕はその展示期間中、80万以上の人々を魅了しました。

「ぽっと出」のキャラクター:「せんとくん」は、阿修羅像の前では、比べるのも不遜で、酷な話ですが、全く勝負になりません。

久しぶりに奈良に行ってみたいものです。
世界につながっていた、天平文化を訪ねて…。

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express01 at 17:57|PermalinkComments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

June 27, 2009

マイケル・ジャクソンの死を惜しむ

Michael Jackson in young ageマイケル・ジャクソン死去のニュース。



唐突に話が変わりますが、…

歴史好きの大先輩が多くの世界遺産を訪ねて来ましたが、「エジプト、メソポタミア、インダス、黄河文明の4大文明発祥の地の今日は、過去の繁栄に比べると、あまりにも無残すぎる」という趣旨の感想を述べられています。私はそれらの世界遺産に行ったことはありませんが、彼の意見には大いにうなずかざるを得ません。その文明はそれを担った人間の子々孫々によって同じ地域で継承されることは希で、今日、その多くはただその土地の文化が残っているだけです。文明はより高度な文明に適した土地とその担い手である人間によって継承・発展していったということでしょう。

「文明と文化」をテーマとした読み物が多く見受けられます。確かに興味のあるテーマですが、もっぱら議論が活発なのは欧米や日本で、当の4大文明発祥の国々ではあまり議論されていないらしく、それがまた面白いところです。我々の生きている現代の文明といえば、教科書にある明治維新政府の「文明開化」の影響か?、イギリス産業革命以降の「ヨーロッパ・アメリカ文明(機械文明)」を指します。

言葉として、「文明」と「文化」があるのですからそれぞれの定義があるのでしょうが、どうも私にはわかりません。

その著『アメリカ素描』にある司馬遼太郎の言葉…
「文明はたれもが参加できる普遍的なもの・合理的なもの・機能的なものを指すのに対し、文化はむしろ不合理なものであり、特定の集団においてのみ通用する特殊なもので、他に及ぼしがたい。つまりは普遍的でない。」

納得できそうですが、私には、どうも、すとんとは腑に落ちない、どこかに引っかかる、つかえたところがあります。「文化」が特定の集団においてのみ通用する特殊なもので、他に及ぼしがたい場合は「文化」に留まりますが、その「文化」の中にも普遍性(のある価値)は生まれるものと思っております(それを即「文明」とは言いませんが…)。

thriller-2マイケル・ジャクソンは、如何に顔を整形しようが、白くしようが、彼の音楽は元来アフリカ系(黒人)が先祖の地からアメリカにもたらされ、発展した、彼らの特殊な『文化』、この場合は彼らの音楽=Blues として定着、白人層の心をつかみ Rock 'N' Rollや Rythm & Bluse に発展、その頂点に立つ「King Of Pops」でした。彼のアルバム:「スリラー Thriller」は、史上最高の数字、世界で1億5千万枚が販売されたそうで、人種・言語・宗教・国家の違いを超えて世界に受け入れられたのです。これは『普遍』の価値と言えるでしょう。

マイケル・ジャクソンの死に接して、こんなとりとめのないことを思い出しました。
ご冥福をお祈りします。

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November 08, 2008

万里の長城 The Great Wall

今回はアメリカ大衆音楽ではなく、「歴史」に関するテーマで、書いている本人も少々緊張しています。

大先輩が先日中国を旅行、「アンコ−ルワット、バチカン、ピラミット、トルコのブル−モスク、そんなの目じゃありません。人類が作った最大の無駄。正しくその通りでした。」が「万里の長城」に登った彼の感想でした。

彼が今までに訪れた世界遺産(?)の内、1カ所さえも行ったことがないので、残念ながら論評しようがありません。しかし、「最大の無駄」かどうかはともかく、世界史的に言えば「意味」はあったように思います。

万里の長城総延長は6,352kmにも及び、音楽ネタで言えば「ルート66」のシカゴからLAまでの距離、2,000マイル=3,200kmどころの話ではなく、その2倍もの距離です。秦の始皇帝が作り始め(秦代:BC 221年 - BC 206年)、当初は人や馬が乗り越えられないぐらいの土塁だったようで、以降の王朝がこれを延伸・補強、現存している煉瓦・石作りの長城は明代(1368年 - 1644年)のもので、彼が見た長城はこれでした。

当初は「人や馬が乗り越えられないぐらいの土塁」だった、というよりも、「羊が乗り越えられないぐらいの土塁で十分」で、北方の遊牧民が彼らの生活の糧である羊の群れを連れて域内に入るのを防いだ、という話を読んだことがあります。田畑を耕す農耕民族としては牧畜を生業とする遊牧民族をその生活圏に受け入れることは出来ませんでした。
ローマ 水道橋
「万里の長城」といえば、それに比肩しうるのは、古代ローマ(BC 753年 - 476年 西ローマ帝国滅亡)の上下水道、道路、コロシアム等の土木建築でしょう。いずれも膨大な労働力と財力を費やした土木建築のでしょうが、どうも根本的な所に大きな違いがあるように思えます。前者が軍事的な、農耕民族の生活圏の防衛線ですが、後者は基本的に社会基盤であるということです。

土木工学は英語でCivil Engineeringなのですが、その語源は古代ローマまで遡ることができる…と読んだことがありますが、Civilization は文明化,文明を意味し、国境・民族の枠を越えて普及、普遍的に受け入れられる価値体系で、その形容詞がCivil、CivilにはCivicと同じく「市民の」との意味もあります。Civil Engineeringとは「文明化のための工学」ということになります。

「万里の長城」、古代ローマの水道、道路のいずれも文明の所産なのですが、古代中国文明は内向的、排外的であるのに対し、古代ローマは外向的、寛容です。前者には文明をまもる工学であっても、「文明化のための工学」の結果ではなかったようです。国境・民族の枠という地理的な拡がりだけではなく、現代に至るまでの時間的拡がりを考えれば、ローマ文明がより普遍的であるように思われます。例えになっていないかも知れませんが、漢字の普及は限定的ですが、ローマの文字:ローマ字の普及は世界に及びます。

秦朝は外敵に滅ぼされたのではなく、内部の蜂起、反乱が原因というのも皮肉な話です。後に興った後漢の時代(25年 - 220年),モンゴル高原の遊牧民族:<<匈奴>>は寒冷な気候に襲われて南下するも長城に阻まれ(?)、彼らは仕方なく西方に向けて移動することになります。その遊牧民族:匈奴の一派が<<フン族>>という説があり、その<<フン族>>が後に(4世紀〜5世紀)ヨーロッパに侵入、追い出される形で、皆さんおなじみの「ゲルマン民族の大移動」となり、これが原因で、ローマ帝国(西ローマ帝国)は476年に滅亡、以降、ヨーロッパは暗黒の中世に入っていきます。

「万里の長城」は「Civil」という意味では、大先輩の意見に賛成ですが、長城の存在がユーラシア大陸を西に巡ってローマ帝国滅亡に繋がった。これが世界史的な「意味」であったように思えますが如何でしょうか、大先輩。
*Image:万里の長城 and ローマ 水道橋


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映画・音楽・歴史、そして、自己流ながら、水彩画を描いています。思いついたことを、気の向いたままに、イサオなりに、深く掘り下げていきます。 ※お気づきの点、改善すべき点をどうぞお聞かせ下さい。

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