のぼうの城

June 11, 2014

忍藩士、尾崎石城の絵日記

和田竜の小説:『のぼうの城 (2007)』(同名の映画の公開は2012)は、豊臣秀吉による小田原北条攻めの際、石田三成の水攻めに耐え抜いて城代:成田長親が三成に一杯食わせるという物語でした。その舞台は忍城(おしじょう)、時代は戦国時代末期(1590)でしたが、舞台は同じ武蔵国埼玉郡忍城(今の埼玉県行田市)、時代はそれから270年後の幕末です。蛇足ながら、何時をもって「幕末」というのかご存じですか?実は、私も最近知ったのですが…、1853年(嘉永6)、ペリー浦賀来航以降を「幕末」と呼ぶそうです。1868年の「明治維新」までのわずか15年間が「幕末」という事で、鎌倉以来の武家社会の幕を引く、逼迫した、革命の時代でした。

松平氏所領の忍(おし)藩十万石は譜代の親藩で、歴代藩主が幕府の要職に就いたため、加えて1783年(天明3年)の浅間山噴火と天明の大飢饉などの大被害で藩の財政は困窮していきます。『のぼうの城』の時代から270年後の幕末に入り、ペリー来航に震撼する幕府からは房総、江戸湾お台場の警備を命ぜられ、水戸の天狗党蜂起鎮圧に駆り出され、士気の上がらぬ後詰の兵を出しただけの「鳥羽伏見の戦」では撤退に取り残されて殿(しんがり)を務める羽目に、藩内では百姓一揆、続く戊辰戦争では新政府軍のお先棒を担ぐことになります。忍藩はなまじ譜代だった故か…、やることなすこと裏目、「貧すれば…」、維新の功績もなく、かと云って幕府に殉ずる名誉もなく、まさに良いところなし…、『のぼうの城』とは全く対照的な幕末でした。

忍藩士、尾崎石城は御馬廻役で百石の中級武士でしたが、安政4年(1857年)の29歳の時に建白書を提出して藩政を論じたために蟄居を申し渡され、わずか十人扶持の下級身分に下げられてしまいました。

この時期を年表で見てみると…、1853年:ペリー来航、1855年:安政の大地震、1858年:井伊直弼大老就任、安政の大獄始まる、1860年:桜田門外の変、「万延」と改元、和宮関東降嫁を固辞、1861年:和宮将軍家茂へ降嫁の為江戸へ、1862年:和宮将軍家茂へ降嫁、松平容保京都守護職に就任、生麦事件、1863年:壬生組(後の新撰組)組織される…、まさに激動の時代でした。藩政への建白書の内容は不明ですが、これが原因で下級身分に降格されたのですが、藩政改革に成功した隣国、常陸国水戸を震源地とする尊皇攘夷思想に傾倒したようです。水戸藩は、御三家の一つでありながら、藩政の次は幕政をも改革しようと企み、同じ佐幕の側の忍藩には「水戸学」による「尊皇攘夷」は危険思想でした。

義弟の出立藩・国家の行末を憂う青年らしさだけでなく、読書家でもあり、文才そして画才にも恵まれた彼は絵日記を残してています。文久元年から翌2年、1861から1862年、居候させてもらっている妹の旦那が、皇女和宮が将軍家茂へ降嫁の為、中仙道を江戸へ向書斎かう一行の警護の下命を受け、慌ただしく出立の準備をしているのが唯一その時代を感じさせる絵です紂しかし、居候の身でありながら、読書家の彼は自ら「石城書斎酔雪楼」と名づけた書斎蕕破椶飽呂泙譟∧現餾鄒や添削、絵に彩色を施し、和漢の古典から実用書まで、所蔵する書物は多義に渡り、極めて高い教養であったという。
私の書斎
※茲蓮私の書斎(四畳半?、広さだけでなく、文才・画才・教養と…足元にも及びません)酒宴_1


下級身分は毎日登城することもなく、その日の生活も困る場面もあり、文才そして画才にも恵まれた彼は屏風・提灯・行灯に絵を描き、あるいは彼の書いた文でお金をもらって家計の足しにし…、中級・下級武士の友人、二つ三つの寺の住職の友人、その集まりで得た町人・町衆の友人と…、皆で酒を飲み薛紂仲間内に病人がでたからと看病に行っている。城下なので百姓は登場しませんが、寺を中心とした中流・下級武士、町人・町衆の身分を越えた付き合いは楽しそうで、絵を見ているだけで愉快になります。松平容保が京都守護職に就任、生麦事件、新撰組が組織され…、まさに激動の時代の中で、忍藩もてんやわんや…、尾崎石城を取り巻く世界だけが別世界のようにゆったりとして、和やかです。

年齢は別に、会社にいくこともなく、生活に困る場面もなくはなく、人さまからお金がもらえるほどには文才、画才、音楽の才能にも恵まれず、半径数キロの行動範囲の私は彼の足元にも及びません。

その後、尾崎石城は明治の時代をどう生きていったのか…、興味のあるところです。先輩友人からお借りした、大岡利昭著『幕末下級武士の絵日記 』でした。

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express01 at 10:22|PermalinkComments(0)TrackBack(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
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ISAO

映画・音楽・歴史、そして、自己流ながら、水彩画を描いています。思いついたことを、気の向いたままに、イサオなりに、深く掘り下げていきます。 ※お気づきの点、改善すべき点をどうぞお聞かせ下さい。

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