November 02, 2010

November 02, 2010

桜田門外ノ変

Momo with Glasses桜田門外ノ変2
Yamaさんは映画ファン、早々と「桜田門外ノ変」を見たそうで、原作者:吉村昭の創作ノートの一部を紹介されています。「攘夷思想が何故水戸藩に興ったのか」、という素朴な疑問に、水戸藩領は太平洋に面した長い海岸線を持ち、近海での外国(アメリカ)捕鯨船の遊弋に接し、外国勢力の圧力に敏感にならざるを得なかった 、という説は新鮮です。

「尊王攘夷」は中国、春秋戦国時代の標語で、それを輸入、日本の事情に合うよう「尊皇攘夷」としました。中国からもたらされた朱子学は江戸時代、林羅山によって武家政治の基本理念として再構築され、徳川幕府の正当学問となります。朱子学に基づいて編纂された『大日本史(1657開始〜1906完成)』は尊王論、編纂を始めた水戸光圀は御三家のひとつである水戸徳川家当主であり、これを水戸藩の学問:『水戸学』として発展させます。

幕末、その『水戸学』が一大思想:「尊皇攘夷」思想となりますが、徳川斉昭はその思想の具現者として徳川家康の業績を賞賛したように、「尊皇攘夷」思想と徳川幕藩体制は何ら矛盾してはいません。「尊皇攘夷」思想は幕末に顕在化しますが、言葉はともかく、思想そのものは、日本の権力者がごく当たり前に持っていたと言えます。

源頼朝は天皇から「征夷大将軍」という官位を得て、京から離れた鎌倉幕府を開き(1192)武家政治は始まりました。天皇は、政権から遠ざけられて久しいのですが、その時々の政権にその正当性を与える、天照大神から連綿と続く日本の最高権威者でした。徳川家康も、既に全く非力な存在となった天皇より「征夷大将軍」の官位を得てその統治に正当性を獲得、加えて、「東照大権現」という伊勢神宮と同格の神階を獲得します。

権威者が権力者に「正当性」を与え、見返りに「保護」を受ける、どこか、西ローマ帝国崩壊( 476年)直後におけるローマ教皇と侵入してきたゲルマン諸王との関係に似ていなくもありません。中世西ヨーロッパに於いては、権威者(ローマ法王)が権力者(ゲルマン王)を凌駕することにもなるのですが、日本では、南北朝の一時期を除いて(?)、権威者(天皇)が権威以外の力を持つことはありませんでした。

戦国の世を平定して徳川幕府を開き、以降代々「征夷大将軍」の官位を保持して来ましたが、幕末に至り、外国勢力の圧迫に「征夷大将軍」はあまりにも無力、「夷を征する」こと、「攘夷」が出来ない「征夷大将軍」はもはや「征夷大将軍」ではないということだったのでしょう。徳川幕府を「征夷大将軍」の官位に値しないと見て、「尊皇攘夷」は「尊皇倒幕」に変わって行きます。

藩政改革を成功させた徳川斉昭は次に幕政改革に乗り出しますが、大老:井伊直弼との権力闘争に破れます。実権を握った井伊直弼は勅許を待たず日米修好通商条約に調印、徳川家茂を将軍継嗣に決定、これに反対する多くの人間を粛正・弾圧(安政の大獄(1858~1859)、「桜田門外の変 1860」はこんな中に起こった事件でした。

襲撃者は、薩摩出身の例外はあるものの、御三家の一つである水戸の脱藩浪人、被害者はこれまた徳川家譜代中の譜代:彦根藩と、徳川政権内部の抗争と言っても良いでしょう。

井伊直弼を護衛する彦根藩士は狼狽の為か、多くが現場を逃走、井伊直弼の首を取られてしまいます。井伊家は家康の時代からの譜代、甲斐武田軍団の遺臣を配属されて以降、「井伊の赤備え」と呼ばれる精鋭・最強の軍団で、西国・京都を睨む最前線という意味で彦根に居城していたのですが、主君の首を取られる大失態をしでかしてしまいます。変後、彦根藩は、主君を護れなかった罪で、警護の藩士に、無傷者には処刑、軽傷・重傷者には切腹を命じます。よほどの恥辱だったのでしょう。

以降、井伊家は幕閣内でないがしろにされるようになり、さらに水戸出身の一橋慶喜(徳川斉昭の実子)が将軍職に就き、第二次長州征伐(1868)では「井伊の赤備え」が長州軍の格好な標的となり大敗。ここで時勢を見極めた…というか、やる気をなくしたのか、開き直ったのか、鳥羽伏見の戦いでは官軍に寝返り、以降の戊辰戦争ではその先鋒として関東に弓を引くことになります。桜田門外で受けた恥辱が動機でしょうか…。

一方の水戸藩、明治維新遂行の原動力となりながら、藩内の凄惨な抗争に明け暮れ、その後は舞台の主役になることはなく、いざ明治新政府が誕生、新国家建設の段階になると、残念ながら新政府に送り出すべき人材はもはや底をついていました。

1860年、年号は安政から万延に変わります。「攘夷」を求めて決起した「桜田門外の変」、皮肉なことに、これを潮目に「尊皇攘夷」の流れも「尊皇倒幕」に変わったように思えます。

Momo holding sign board-HKX Radio
※Nobu, Kun & Isa Band の今までの曲は左サイド、I Pod 風のプレーヤーでお聴きになれます。
       
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ISAO

映画・音楽・歴史、そして、自己流ながら、水彩画を描いています。思いついたことを、気の向いたままに、イサオなりに、深く掘り下げていきます。 ※お気づきの点、改善すべき点をどうぞお聞かせ下さい。

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